ライブを終えて楽屋に戻ってくると、机の真ん中にタコ焼きが置いてあった。

差し入れかと思い、お腹もすいていたので食べようとした、そのとき。メンバーの一人が口を開いた。

「これはスキャンダルタコ焼きっていってね。いまからみんなでやろうよ」

私はすぐさま尋ねた。

「なにそれ？　おいしいの？」

するとメンバーは言った。

「そんなぬるいもんじゃないよ。これはね、ロシアンルーレットみたいに、当たるとスキャンダルが発覚してしまうタコ焼きなの。スキャンダルが多い世の中でしょ？　だから、発覚する前に事前に見つけて、脱退させようと考えたの。ちなみに、私はスキャンダルなんてないからね。みんなも、ないよね？」

私は内心で焦りはじめた。なぜなら、メンバーには隠していたが、スキャンダルになるネタがあるのだ。周りを見渡す。ほかのメンバーたちも青い顔をしている。どうやら、みんな同じ気持ちになっているらしい。

「じゃあ、いいね？　はじめるよ？」

そう言って、タコ焼きがひとつずつ回ってくる。

「せーので食べるから、ずるはできないよ」

どんどんタコ焼きが配られる。

ついに私の番が回ってきて、恐る恐るひとつをつかむ。

「じゃあ、みんな回ったね？　せーの！」

ぱくりとみんな呑みこんだ。

次の瞬間、大声が楽屋に響いた。

「わたし、彼氏とラブラブでーす！！」

見ると、メンバーの一人が慌てて口をふさいでいる。

でも、もう手遅れ。スキャンダル発覚だ。

「あんた、恋愛禁止を破ったね。じゃあね、ばいばい」

言われた一人は蒼白になっているが、そのまま楽屋を去っていった。

私は、ずるい考えだけど、自分じゃなくて本当によかったなと思った。

そして、いつこのタコ焼きを食べさせられてもいいように、今後は気をつけようと心に誓った。

後日、聞いた話によると、やめたあのメンバーは店を開業したらしい。

やめさせられた腹いせに、スキャンダルタコ焼き屋さんを。

2016.03